オーラルフレイルを知っていますか?対策と予防について
毎年6月4~10日は歯の健康週間です。(過去コラム:6月4日~10日は歯と口の健康週間!お口のケア、きちんとできていますか?)
先日、政府の運営方針の中に全国民の歯科検診を義務化する「国民皆歯科検診」の導入が検討され、話題になりました。これは、歯周病等の歯科疾患の早期発見、治療により口腔内の健康を保つことで、他の病気を予防し、健康寿命の延伸を図るためのものです。
このように、口腔内の状況と健康寿命は大きく関係しています。最近ではこうしたオーラルフレイル(口腔機能の衰え)の予防・対策が注目されています。
今回はオーラルフレイルについてご紹介します。
・フレイル/オーラルフレイルとは?
・あなたは大丈夫?セルフチェックリスト
・オーラルフレイルが進むとどうなる?
・オーラルフレイル予防のポイント
・今日から始めよう!オーラルフレイル予防体操
フレイル/オーラルフレイルとは?
フレイルとは?
フレイルとは、英語の「Frailty(フレイルティ/虚弱)」が語源となった言葉で、加齢によって心身が衰えた状態、健康と要介護の中間の状態を指します。
フレイルの状態を放置してしまうと、要介護になってしまう危険性が高まるため、早めの予防、対策が重要です。
オーラルフレイルとは?
オーラルフレイルとは、お口の機能のささいな衰えのことです。食べこぼし、軽いむせ、活舌の悪化などが症状として挙げられます。
このオーラルフレイルは、身体的フレイルを発症する前段階のサインとして、注目を集めています。
オーラルフレイルもフレイル同様、早期に気付き対策を行うことによって、機能回復が可能となります。
あなたは大丈夫?セルフチェックリスト
オーラルフレイルは気付かないうちに進行してしまう可能性があります。
早期発見のために、セルフチェックをしてみましょう。
合計点数によって現在のお口の状況が分かります。
※出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢
「危険性あり」「危険性が高い」評価がでた場合は、歯科医院で検査を受けてみましょう。
オーラルフレイルが進むとどうなる?
オーラルフレイルは4つのレベルに分かれています。
◆第1レベル:口の健康リテラシーの低下
高齢になるとともに社会参加への意欲が失われたり、孤立したりする方が増えます。それが原因となり、自身のお口をキレイにすることに無関心になり、歯の喪失リスクが増加します。
◆第2レベル:口のささいなトラブル
滑舌が悪くなる・食べこぼしが増える・噛めない食品が増える・むせやすいといった衰えを感じはじめます。それによって、噛むのが楽なやわらかい食品を選んで食する方も多く、食品多様性や食欲が低下し、さらにお口の機能低下が進んでしまうことになります。
◆第3レベル :口の機能低下
口の中が乾燥し、唾液の分泌が少なくなると、自浄作用が低下し、むし歯や歯周炎の発症、義歯不適合などの問題は発生します。また、咀嚼機能や嚥下機能も低下し、徐々に筋肉量も減少していきます。
◆第4レベル:食べる機能の障害
お口の機能低下がさらに進行すると、食べ物を噛んだり飲み込んだりすることが困難になり、口からの食事が難しくなります。これによって低栄養の状態が続き、身体的なフレイルが加速して最終的には要介護状態に至ってしまいます。
また、飲み込む力が低下し嚥下障害を起こすと、食べ物が気管に入ってしまう誤嚥を引き起こしやすくなります。細菌が気管に入ると誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
参考:東京都健康長寿医療センター 平野浩彦作図
オーラルフレイル予防のポイント
◆口の中を清潔に
口の中が清潔に保たれていないと、むし歯や歯周病菌のリスクが高まり、歯を失う可能性があります。最近の研究では、歯周病菌が認知症を悪化させるということも分かってきています。
また、口の中の細菌を減らすことによって、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことにもつながります。フロスやマウスウォッシュ、液体歯磨きなども活用しながら、毎日しっかりと歯磨きをしましょう。
◆定期的に歯科検診を
定期的に歯科検診を受けることにより、オーラルフレイルの早期発見にもつながります。3~4ヶ月に一度は定期検診を受け、歯のクリーニングを行いましょう。
◆しっかりと口を動かす
口腔機能が衰えると、「噛む」「飲み込む」「話す」といった行為が難しくなります。普段から食べ物を良く噛む、会話をする、歌を歌う、などを心がけ、口をしっかりと動かすように意識しましょう。
今日から始めよう!オーラルフレイル予防体操
お口の機能の維持・改善に効果的な「お口の体操」をご紹介します。
◆口の体操
①「う」の口で唇をすぼめる。
②「い」の口で唇を横に開く。
◆舌の体操
①舌を左のほおの内側に強く押しつける。
②指で、押し出された舌の先を、ほおの上から押さえる。
③指に抵抗するように、ゆっくり10回舌を押し返す。
④右のほおでも同じこと繰り返す。
◆パタカラ体操
それぞれ舌や口を上手に操らないときれいに発音できない音です。次のことを意識して発音してください。
①「パパパパパパパパ」…唇をはじくように
②「タタタタタタタタ」…舌先を上の前歯の裏につけるように
③「カカカカカカカカ」…舌の奥を上顎(あご)の奥につけるように
④「ララララララララ」…舌をまるめるように
※①~④を2セット行う。
◆嚥下機能トレーニング
のみ込むための筋肉を鍛えることで、食事中の「むせこみ」などの症状が改善されます。
・開口訓練
①ゆっくり大きく口を開け10秒間キープする。
②しっかり口を閉じ、奥歯をかみしめて舌を上あごに押し当てて10秒間キープする。
※①~②を3セット行う。
◆ベロ出しごっくん体操
①舌先を少し出したまま、口を閉じてつばをのみ込みます。
まとめ
オーラルフレイルは、治療やトレーニングによって改善が可能なため、ちょっとしたことでも「年のせいだから」と諦めないことが肝心です。小さな積み重ねが健康寿命を大きく左右することを意識して、口腔環境の改善に取り組んでいきましょう。