冬は骨折が急増する季節!骨折を予防するには
立春を過ぎましたが、まだまだ寒い日が続くこの時期。冬は血栓やヒートショックの危険性が高まるとこちらのコラムでもご紹介しましたが、1年の内で一番骨折が多い季節でもあるのです。特に高齢者の骨折は、介護や寝たきりの原因となる危険性もあるため、しっかり予防することが重要です。
・冬に骨折する人が増えるのはなぜ?
・高齢者が骨折しやすい理由
・骨折しやすいのはどこ?
・転倒を予防しよう
・丈夫な骨を作ろう
冬に骨折する人が増えるのはなぜ?
◆身体的な要因
寒くなると外出の機会が減り、運動不足で筋肉が硬くなるため、体が動かしづらくなります。また、厚着をするため動きが鈍くなったり、靴下で足元が滑りやすくなったりすることも転倒につながります。
◆環境的な要因
冬は路面の凍結や積雪によって滑りやすくなります。室内でも毛足の長い絨毯やマット、こたつ布団や電気コードによって転倒する人が増えています。
高齢者が骨折しやすい理由
高齢者は以下の理由により、転倒・骨折しやすくなっているため、特に注意が必要です。
◆骨の強度が低下(骨粗しょう症の発症)
年を取ると骨形成のスピードが落ち、骨が弱くなります。骨密度が低下し、骨がスカスカの状態を骨粗しょう症と言います。特に女性は閉経後、骨の形成を促す女性ホルモンの分泌が低下することから、骨粗しょう症を発症する人が急増します。80歳以上の女性の半数以上が骨粗しょう症を発症していると言われています。
◆筋力・バランス機能の低下
60歳を過ぎると筋力や身体機能が徐々に低下し、バランスを崩しやすくなります。特に太ももを持ち上げる腸腰筋(ちょうようきん)の減少は、思った通りに足が上がらずにつまずいてしまったり、階段を踏み外したりしてしまうことがあり、転倒・骨折につながります。加齢による視力の低下も転倒原因の一つです。
◆病気や薬の影響
高齢者は複数の薬を飲むことも多く、薬によってはふらつきや立ちくらみなどの副作用が現れるものもあります。定期的に薬の種類と量を主治医に相談しましょう。
骨折しやすいのはどこ?
高齢者が骨折しやすい部位は以下の4つです。
➀大腿骨近位部(だいたいこつきんいぶ)骨折
太ももの付け根の骨折で、転倒して腰部を打撲することによって起こります。大腿骨近位部を骨折すると、立ったり歩いたりなどの基本的な動作が困難になり、動けない状態が長く続くことにより寝たきりになってしまう方も少なくありません。
②脊椎圧迫(せきついあっぱく)骨折
背骨の骨折です。尻もちをついたり、不用意に重い物を持ったりすることで起こります。骨粗しょう症が進むと、普段の生活動作の中でも起こることがあり、咳やくしゃみの衝撃で骨折することもあります。
③上腕骨近位部(じょうわんこつきんいぶ)骨折
腕の付け根の骨折です。転んで肩を直接打ったり、肘をついたりした拍子に起こります。
④橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折
手首の骨折です。転んで手をついた時に起こります。
転倒を予防しよう
骨折を予防するためにまず大切なことは、転ばないことです。転倒は身の回りの環境や筋力を鍛えることで、最大限予防することができます。
◆家の環境を整えよう
転倒事故の多くは家の中で起きています。転倒の原因をなくしていきましょう。
・マット類はなるべく敷かない
・コード類は壁に沿わせるなどして、動線の邪魔にならないようにする
・滑り止めが付いている靴下やスリッパを履く
・床や廊下には物を置かない
・玄関、階段、浴室などには手すりを設置する
・夜間足元が見えるよう照明を明るくする
◆外出時に注意しよう
屋外でも心がけ次第で転倒を予防することはできます。外出の際は以下に注意しましょう。
・両手が空くようなリュック等を活用する。
・裾のからまりやすい服は避ける
・焦って慌てないように、時間に余裕をもって行動する
・すべりやすい雨や雪の日は、なるべく外出を避ける
・路面のわずかな段差に注意する
・必要に応じて杖を使用する
◆足腰を鍛えて転ばない体になろう
筋肉量が減少すると足が上がらなくなり、転倒しやすくなります。体を動かすことで、下半身の筋肉を鍛えましょう。
●椅子に座って足を上げ下ろし(左右10回ずつ)
➀いすに座り、背もたれに寄りかからず背筋を伸ばす。
②少しひざを伸ばした状態から、ひざの角度を変えずにゆっくり上げ下ろしを行う。
※床にかかとを付けないように、また呼吸を止めないように注意しましょう。
●立った状態でかかとのあげおろし(10回~20回)
➀ゆっくりとかかとをあげ、ゆっくりとおろす。
※ひざが曲がらないように気を付けましょう。
慣れてきたら少しずつ回数を増やして行いましょう。(くれぐれも無理は厳禁です)
丈夫な骨を作ろう
そして骨折予防でもう一つ大切なことが、骨を強くすること、つまり骨粗しょう症の予防です。骨密度が低下する中年期以降でも、生活習慣の改善によって骨粗しょう症のリスクを減らすことができます。骨粗しょう症の予防方法は大きく分けて、運動・栄養・薬の三つです。
◆運動
骨は衝撃を与えることで作られます。運動などで負荷をかけると骨密度は増加し、寝たきりの状態で負荷をかけないと骨密度は急激に減少します。上で紹介した体操の他、手軽にできるウォーキングもおすすめです。
一方で、フィットネスクラブで骨折する高齢者も増えてきています。運動の際は自分の体力を過信せず、無理のない範囲で行いましょう。
◆食事の改善
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素を積極的に摂りましょう。 カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、カルシウムの吸収率がよくなります。高齢になるとたんぱく質の摂取量が減少しますが、たんぱく質不足は骨密度低下を助長します。意識して摂取するようにしましょう。
牛乳・乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、チンゲン菜、大豆製品など
●ビタミンDを含む食材
サケ、ウナギ、サンマ、メカジキ、イサキ、カレイ、シイタケ、キクラゲ、卵など
●ビタミンKを含む食材
納豆、ホウレン草、小松菜、ニラ、ブロッコリー、サニーレタス、キャベツなど
また、ビタミンDは日光に当たることで活性化されると言われています。冬の寒い時期は紫外線を浴びる機会も減りますので、冬も積極的に外に出て日の光を浴びるようにしましょう。
◆薬での治療
骨粗しょう症は「沈黙の病気」とも言われ、自覚症状はほとんどありません。健康診断で骨密度の測定をしてみましょう。実際に骨粗しょう症と診断されたら、骨を強くする薬を使用して治療します。骨粗しょう症も他の病気と同じように、早期発見が重要です。
まとめ
高齢者の骨折は、その後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)に大きく影響する可能性があります。また、骨は何もしなければどんどん弱くなっていきます。自分はまだまだ若いと思っていても、骨密度は徐々に低下していきます。まずはできることから始めて、骨折とは無縁の生活を目指しましょう。