冬の入浴に潜む危険!ヒートショックにご注意ください!
寒い季節、温かいお風呂につかると体が温まり疲れもとれて、リラックスできますよね。
しかし、冬の入浴は注意しないと命を落とす危険が潜んでいます。
毎日の入浴を安全で快適なものにするために、そして大切な命を守るために、ヒートショックの危険性についてご紹介します。
・ヒートショックとは?
・ヒートショックが起きるしくみ
・高齢者に多いのはなぜ?
・ヒートショックを起こしやすい人の条件
・ヒートショックの予防法
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度の変化で血圧が大きく変動し、心臓や血管の疾患が起こることを言います。この血圧の乱高下に伴って、失神や不整脈、脳卒中、心筋梗塞などの病気を引き起こすことがあります。
令和元年のデータでは、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,900人で、交通事故死亡者数2,508人のおおよそ2倍となっており、原因の多くはヒートショックと言われています。(参照:消費者庁/冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! )
ヒートショックが起きるしくみ
ヒートショックは11月から2月に多く発生します。
真冬は、暖房の効いた暖かい部屋と暖房の効いていない場所の温度差は、10℃を超えると言われています。暖かい部屋から寒い浴室に移動すると、体は血管を細くして熱を外に逃がさないようにするため、血圧が上昇します。この血圧の急上昇が心筋梗塞、脳卒中を引き起こすと言われています。
また、温かい湯船につかると血管が拡張し、急上昇した血圧が急低下します。この急激な血圧低下でめまいやふらつきが起きたり、失神したりする可能性があります。意識を失ったまま溺れて命を失うケースも少なくありません。
このように短時間で血圧が大きく変動することにより、ヒートショックは起こります。
ヒートショックを起こしやすい人
ヒートショックは65歳以上の高齢者、高血圧や糖尿病などの持病がある人、肥満や睡眠時無呼吸症候群の人が起こりやすいと言われています。
下記のチェックリストに該当する場合は、ヒートショックの対策をして入浴するようにしましょう。
【要注意項目】
・65歳以上(特に75歳以上は注意)
・以下の病歴がある
→狭心症、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞
・以下の持病がある
→不整脈、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群
・肥満体型である
・浴室や脱衣場に暖房設備がない
・一番風呂が好き
・熱い風呂(42℃以上)が好き
・飲酒後にお風呂に入ることがある
・30分以上お湯に浸かっている
ヒートショックの予防法
ヒートショックは対策次第で防ぐことができます。冬の入浴時は以下の点を心がけましょう。
◆入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
ヒートショックは温度差によって起こります。急激な血圧の変動を防ぐため、入浴前に脱衣所と浴室内を暖めておきましょう。浴室に暖房設備がない場合は、「湯を浴槽に入れるときにシャワーから給湯する」、「浴槽の湯が沸いたところで、十分にかき混ぜて蒸気を立て、ふたを外しておく」など、できるだけ浴室内を暖め寒暖差が少なくなるように工夫しておきましょう。トイレも寒いようであれば、暖房器具や暖房便座を取り付けることを検討してください。
◆湯温は41度以下、長湯をしない
湯温が高すぎると体に負担がかかります。例えば、42度のお湯に10分入浴すると、体温が38度近くに達し、高体温などにより意識障害を起こす危険が高まります。お湯の温度は41度以下、お湯につかる時間は10分までを目安にし、長時間の入浴は避けましょう。
また、入浴前のかけ湯も効果的です。心臓から遠い足先のほうから肩まで徐々にお湯をかけてお湯の温度に体を慣らすと、心臓に負担がかからず血圧の急激な変動を防ぐことができます。
◆肩までお湯に浸からない
ご高齢の方や心臓の持病がある方は、肩までつかると水圧で心臓に負担がかかります。
みぞおち程度まで湯に浸かる半身浴が良いでしょう。
◆浴槽から急に立ち上がらない
入浴中には体に水圧がかかっています。その状態から急に立ち上がると体にかかっていた水圧がなくなり、圧迫されていた血管が一気に拡張します。すると脳に行く血液が減ることで貧血のような状態になり、意識を失ってしまうことがあります。浴槽から立ち上がった時に、めまいや立ちくらみを起こしたことがある方は特に注意が必要です。浴槽から出る時には、手すりや浴槽のへりなどを使ってゆっくり立ち上がるようにしましょう。
◆食後すぐ、飲酒後、服薬後の入浴は避ける
食後や飲酒後は血圧が低下します。特に高齢者は、食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧によって失神することがあるため、食後すぐの入浴は避けましょう。飲酒によっても一時的に血圧が下がり、転倒の原因にもなります。飲酒後はアルコールが抜けるまでは入浴しないようにしましょう。
また医薬品には血圧を下げたり、眠気を誘ったりする作用がある薬がありますので、服薬後も入浴は避けましょう。
◆入浴前後に水分補給する
入浴時はたくさんの汗をかき、気づかないうちに脱水症状を起こしてしまう可能性があります。脱水症状は血液の流れが滞り、ヒートショックのリスクを高めてしまいます。入浴前後にコップ一杯の水を飲むとよいでしょう。
その他、家族と一緒に住んでいる場合は入浴前に一声かけたり、入浴時間が長い場合には様子を見に行ったりするなどして、万が一の場合にもすぐに対処できる環境作りが重要です。
もしヒートショックが起きてしまったら
注意していても体調や環境によってヒートショックの症状が起きてしまうこともあります。万が一、ヒートショックになってしまった時の対応方法を知っておくことも大切です。
◆【軽度】めまいや立ちくらみ
ヒートショックでめまいやふらつきを感じたら、無理に立ち上がろうとせず、ゆっくりとその場に座るか、可能なら横になるようにしましょう。できるだけ体を低くして、動かないことが大切です。
◆【重度】呼吸困難・嘔吐・意識の消失
胸が締め付けられるように痛む場合は「心筋梗塞」の恐れがあります。心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液が流れなくなった状態です。すぐに救急車を呼んでください。
嘔吐している場合は、呼吸ができるように嘔吐物を取り除き、顔は横向きにします。
もし入浴中にヒートショックになった人を見つけた場合は、浴槽の水を抜いて、ご本人を湯船から出してください。口や鼻に水が入らないように注意します。
一人で担ぐことが難しい場合、浴槽のお湯を減らし溺れないようにして助けを待ちましょう。
◆【その他の症状】頭痛・ろれつが回らない・嘔吐・意識の消失
頭痛やろれつが回らない場合は「脳卒中」の恐れがあるので、すぐに救急車を呼びます。脳卒中は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの総称です。
無理に動かしたり揺さぶったりしてはいけません。嘔吐物を取り除き、横向きに寝かせた状態で救急車を待ってください。
まとめ
ヒートショックや入浴中の事故は、高齢者だけではなく、若い人にも起こる可能性があります。きちんと対策すれば予防することができますので、「自分は大丈夫」と過信はせずに、冬の寒さを乗り切りましょう。